ジュニアアスリートと鎮痛剤

みなさんの中にも 現在、痛み止めを飲みながら部活やスポーツを続けている人もいると思います

治療中、選手の親御さんから「うちの子は○○が痛いのに鎮痛剤を飲みながらやっています、どうしたらよいでしょうか?」というご質問を頻繁にいただきます

今回は それに対する僕なりの考えをお伝えしたいと思います

■ 安易な鎮痛剤の服用

スポーツをしているとどうしてもケガや障害などが起こってしまいます

トレーナーの現場ではケガの予防を最も重要な課題の1つ(特にジュニア世代)として活動しているのですが最も難しい課題の1つでもあります

その中で最も気になり違和感を感じるのが、高校生ぐらいになり ある程度コンディショニングの知識が備わってくると「競技を続けるために、すぐに(とても気軽に)痛み止めを要求してくる」ことです

特にサッカー選手・柔道などの格闘技系の選手に多く見受けられます

■ 痛みとは?

まず 痛みが私達の身体にどのような働きをしているかについて簡単に説明すると

私たちは痛みを感じることで身体に何らかの異常や異変が起きていることに気付きます

もし 痛いという感覚がなかったら危険を察知したり回避することができず、ケガや病気を繰り返し命の危険につながることもあります

痛みは、体温・呼吸・脈拍・血圧と並んで、私たちが生きていることを示すバイタルサインといわれ、私たちの身体や命を守る生命活動に欠かせない役割を持ちます

痛くなくなったら やっていいよ!

みなさんを惑わす 悪魔のフレーズです、この一言がジュニア選手に非常に大きな影響を与えているように思います

病院に行ってDr.にこのように言われたら、選手自身や親御さんの頭の中に

痛くない=治った=競技を再開

という流れが当たり前のようにできてしまいます

もちろん 打撲や軽い捻挫のような急性の外傷などであれば 痛みが無くなれば問題なく競技を再開できます

ところが 障害(野球肘、シンスプリント、オスグッド、グロインペインなど)と呼ばれるケガに対しては同様の考え方が通用しません

障害とは スポーツによって繰り返し過度の負担が積み重なり、痛みを主とした慢性的に症状が続くものをいいます

これらの症状は過度の練習によって身体が限界を感じ「痛み」としての警告(オーバーワーク)や、誤った使い方が原因で特定の部分に負担がかかり過ぎてしまったことによる発痛が考えられます

つまり 原因となっているオーバーワークをセーブして休んだり、 間違った身体の使い方を改善しない限り完治とは言えないのです

病院に行くとDr.が簡単に鎮痛剤を処方していることも大きく影響していると思います、僕自身も整形外科に勤めたことがありますが鎮痛剤や湿布しか処方してくれない病院が多過ぎるのも問題だと思います

■ 鎮痛剤のデメリットとは?

鎮痛剤の使用は時として問題があるということを認識する必要があります

使い続けることで

  • 痛みが楽になったと錯覚し競技を続けてしまう
  • 服用を繰り返すことで薬効力が弱くなり摂取量が増加する
  • 継続して服用すると軟部組織が弱くなる
  • 身体の持つ治癒能力を低下させる
  • 消化器官に悪影響を及ぼしやすい

と言われています

特筆すべきは

「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はその抗炎症作用によって骨の治癒を遅らせ、たんぱく質合成を減少させる。そのうえ、運動後には骨格筋の衛星細胞(の活性を)を阻害する」と言われています

衛星細胞というのは 筋肉のもとになり、筋肉の修復に必須であることがわかっている細胞なので アスリートにとって「良いことは何もない」ということになります

痛み止めを服用しながらの競技に関してはトッププロのレベルでも同様です

FIFAワールドカップ(W杯)の02年から14年の4大会(日本・韓国、ドイツ、南アフリカ、ブラジル)で、参加各チームのプロサッカー選手の総計1000人以上の薬の使用量をまとめたものです

http://bjsm.bmj.com/content/49/9/580

02年大会以降、FIFAは国際試合での薬の使用量をチェックしており、各チームのチームドクターは試合の72時間前に全選手に処方されている薬の情報を報告するよう求められています

その結果、成人男子選手の69%が非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用していたことがわかりました

彼らプロの選手はサッカーをすることでお金を稼いでいるので、時と場合によっては鎮痛剤を服用しながらのプレーも止む終えない場合もあります

しかし、ジュニア選手でも気軽に鎮痛剤を服用し 競技を継続している日本の現状は異常ではないかと思います

野球やサッカーなどの団体競技において日本のジュニア世代は、選手一人一人を育てるよりもチームとして結果を出すことが強く求められているので、レギュラーで出ている選手は試合に出続けることが強く求められます

監督やコーチも、主力の選手がいないのは結果に大きく影響してきますので「なんとかして試合に出れないか?間に合いそうか?」とプレッシャーをかけられたことが僕もあります

また、個人競技である競泳においても 全国中学・インターハイ・ジュニアオリンピックetc. 大きな大会で上位入賞がかかっている場合、鎮痛剤を服用してでも強硬出場するジュニア選手を何人も見ています

■ 欧州ではジュニア選手を休ませるのは当たり前の義務

記憶に新しいところで、2019夏 甲子園出場をかけた岩手県大会決勝において大船渡高校の國保陽平監督は絶対エースの佐々木朗希投手の登板を「疲労による故障の危険」を理由に回避し敗戦し大きな批判を浴びてしまいました

このニュースを長く欧州のサッカークラブにおいてトレーナーを歴任した友人はとても驚いていました

「なぜ 國保監督が批判されるんだ?」…と

たとえば 才能のある15歳のサッカー選手が腰痛に悩まされていたとします

欧州では プロの卵である彼をすでに「プロ」と同様の扱いを当たり前のようにするので、ドクターが診察し トレーナーが付き リハビリメニューを計画・実施し 再びドクターが検査し復帰の許可が下りるまで練習を再開できません

ジュニア選手の監督・コーチはトップチームで活躍できる選手を育てることが使命となるので、無理をさせて将来を潰すようなことはしません

この考えが欧州に遅咲きの選手が多い理由の1つです

  • きちんと徹底的に休ませる(日本はこの部分に対する考えが非常に欠落しています)
  • 休んで痛みが取れたら 必要なリハビリ・新たな身体の使い方を身につける付けるプログラムを実行する
  • Dr.のチェックを受けてから復帰をする

これが復帰までの理想的な流れだと思います

僕の意見としては鎮痛剤を服用しながらの競技は基本的には反対です、特にジュニア選手のそれには断固反対です

ただ… 全国大会の決勝レースに「痛み止めを飲んでもレースに出たい」と選手に訴えられたらどうしましょう?

正直悩みます、難しい問題ですね




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